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物流拠点を自動化する搬送ロボットの概要
搬送ロボットが注目される理由とは?Eコマース普及が需要高騰の要因
労働力不足を改善するため、そして安定したパフォーマンスを希望する声から、導入が進む産業用ロボット。
近年、需要増加や作業の負担が大きいために従業員が思うように集まらない物流業界では、製品の搬送を担う「搬送ロボット」の需要が高まっている。
経済産業省の調査結果にある海外のEC化率と比べると、アメリカのEC化率は約10%、中国では約35%を超えており、日本でのECの普及は遅れているのが現状であるが、全産業においてEC市場は伸び続けている。
2019年度のBtoC市場における日本国内のEC市場規模は19兆3,609億円、EC化率は6.76%で市場規模が対前年比7.65%増になった。
その後、コロナの影響により益々伸びている。
搬送ロボットに期待が高まる理由
搬送ロボットとは、物流倉庫や製造工場において、商品や部品を搬送する役割を持ったロボットのことである。
従来の物流倉庫では、作業員が棚に移動し、必要な数の商品をピッキングして梱包、発送作業を行うことが主な出荷方法だった。
近年、インターネット通販(Eコマース)の利用者が急増したことで、物流の需要が高騰している。
注文数だけでなく取り扱う商品の種類も増加したため、作業員は膨大な商品を広い倉庫の中からすばやくピックアップし、大量の注文に対応しなければならなくなっている。
作業量が増えるほど、人が作業を行う上で避けられない人為ミスや、作業員の身体的な負担の増加といった課題も生じる。
このような問題点や課題を解消して、出荷作業を効率化するテクノロジーとして期待されているのが搬送ロボットである。
搬送ロボットの種類と特徴
搬送ロボットにはいくつかのタイプがあり、解決したい課題や工場の規模によって最適な型が異なります。
①現在の主流は棚ごと搬送するタイプ
現在の搬送ロボットで主流なのは、出荷担当者の手元まで、目的の商品を棚ごと搬送するタイプ。
物流倉庫は取り扱う商品が多ければ多いほど床面積は拡大され、作業員は広い倉庫のなかを歩き回らなければない。商品を棚ごと搬送するロボットがあれば作業員は移動しなくてもよくなり、商品をピックアップするだけになるため効率が大きく向上する特徴がある。
②運搬者の後についてくるタイプ
日本の労働人口が減少している現状では、女性や高齢者の作業員も貴重な人材となっている。
しかし、物流現場は重い貨物を運ぶことも珍しくないと言える。
体力に自信のない作業員が重い貨物を運搬する場合、ほかの作業員の力を借りたり、一度に運べる数が少なくなって何度も往復する必要が生じたりするなど、作業効率は下がる可能性もある。
そのときに役立つのが、作業員の後を追う形で貨物を運ぶ搬送ロボットである。
作業員が複数の重い荷物を一度で運べるようになり、作業員の体力差に関係なく一定の成果を発揮でると期待される。
③必要なものをピッキングするタイプ(今後重要が増えると予想されるタイプ)
AIを搭載し、カメラ画像をもとに必要な商品を判断、ピッキングを行う搬送ロボットの開発も行われている。
作業員によるピッキングミスを回避し、出荷作業のピークを迎えても一定の成果が上げられる。
しかし、ピッキング作業をロボットに行わせるためには、複雑な処理が必要になる。
商品の大きさや硬さによって力加減は異なり、作業中に商品がなくなれば補充する必要が発生する。
また物流倉庫内の在庫の位置は変化することも多く、作業後に陳列が乱れれば、在庫の段ボールを綺麗に積み直さなければならない。
このように、搬送ロボットが行う作業の中でも、依然としてピッキングは課題が多くあると言える。
ただ、現在はロボットが最適な判断をするためのAIや、商品を取り扱うアームの技術革新が著しいため、課題の解決はそう遠くはないと言える。
例えば、Foward X社製の自走型ピッキングロボットは注目を集めている。 >フォワードエックス ジャパン
搬送ロボットを導入するメリット
物流業界の人手不足を補う搬送ロボットは、既存の物流業界に蔓延していた課題を解消できる。
①人件費の最適化ができる
倉庫での出荷作業は、「倉庫内の移動」「運搬」「ピックアップ」に分けられる。
これまで出荷作業の効率を上げるためには、多くの作業員を雇い人海戦術で大量の注文をさばくしかなかった。
しかし搬送ロボットを導入すると、ロボットが「倉庫内の移動」や「運搬」といった作業を担ってくれるため、作業員は「ピックアップ」だけに専念できるようになる。
倉庫内の単純作業に割いていた人件費をほかの用途に充てられるため、優秀な人材に高度な仕事を任せることも可能となり、業務拡大を推し進められることが可能になる。
②商品の配置変更によるコストを削減できる
倉庫内の商品は、入荷状況により、頻繁に商品棚のレイアウトや作業場所が変わる。
配置が変わるたびに、作業員は商品の場所を調べたり、覚えたりしなければならない。
場所が変わることによるコストは、現場の作業員だけにかかるものではない。
「どこに商品がある」と倉庫全体を管理する人のコストもかかる。
搬送ロボットを導入するときは、倉庫内の商品を管理するシステムや、ロボットの移動を制御する「ディスパッチャ」という搬送コントローラの整備が必要になる。
こうした倉庫内のシステムを一度確立すれば、ロボットが商品の場所を自動で把握し、作業を行ってくれることが実現する。
③倉庫のスペースを最大限活用できる
国内の一部では、倉庫内の商品管理(在庫・位置)と棚からの入出庫を行うロボットをあわせた「自動倉庫」が導入されている。
自動倉庫を実現するタイプのロボットは、従来のように作業員が移動するための通路を確保する必要がないため、倉庫スペースの有効活用が可能になる。
小さい倉庫で商品を管理できれば、施設利用の固定費を抑えられるため、コスト削減にもつながる。
出荷効率の向上、間接費の削減。
搬送ロボットが有する「人件費の効率化」や「コスト削減」、「スペースの有効活用」といったメリットが認められ、現在は国内外を問わず、開発や導入が進んでいる。
①(大手家具専門店の事例)大型商品の扱いに制限はあるが、出荷効率を4倍に
国内の大手家具専門店は、無人搬送ロボットを導入した。
このロボットは、物流倉庫の商品棚を動かして最適な位置に移動させる機能を持っている。
あくまでも棚のサイズという制約から大型の商品を運ぶことはできないものの、導入の効果として出荷効率が4倍になったとも言われている。
②(大手通販会社の事例)出荷作業を1/4に短縮しつつ、24時間稼働を実現
世界的に有名な大手通販サービスを運営する企業も商品棚の下に潜り込んで棚を運ぶロボットを導入している。
従来は作業員自らが商品をピックアップして梱包、出荷していた作業には60〜75分もの時間が必要でだった。搬送ロボットの導入により作業時間を15分にまで短縮が実現する。
このロボットは床のバーコードを頼りに移動するため、倉庫内の照明を切った真夜中でも稼働し続けることができ、ユーザーからの注文を24時間受け付けられるようになった。
>> PSIとはを参照
まとめ
今後の物流業界を支えることが期待される搬送ロボット
今後、日本の労働人口は減り続けると言われている一方、物流業界の需要は増え続けることが予想されている。
その解決策として、搬送ロボットを活用した工場の自動化が注目されているものの、ロボットの導入ノウハウを持っている企業はほんのひと握りである。
ロボット導入がはじめての企業でも、「人と機械の得意領域の見極め」を正確に行えば、工場の自動化の達成は可能になる。
搬送ロボットは倉庫の入出荷で活躍するが、すべての出荷業は行えない。
実際に商品を出荷するまでには、商品のピックアップだけでなく、「袋詰め・帯掛け」や「段ボール製函」、「梱包」「パレタイズ」といった作業も発生することもある。
これらの作業も含め、人と機械が得意な領域を的確に見極めて自動化を行うことで、工場全体の最適化が可能になる。
ロボット導入のポイントをおさえ、スムーズに計画を進行することで、導入コストの削減や効果的な運用が見込めるようになる。